新規分析法

単一分子の結合・解離を質量で長時間追跡、新たな質量フォトメトリー法

支持脂質二重膜に分子をとどめ、溶液中の相手分子との結合・解離を質量変化として最長約1時間観察。研究用の特製光学系を使った実証です。

英オックスフォード大学などの研究チームは2026年10月26日、単一分子の質量変化を連続測定する「continuous mass photometry(cMP)」をNature Methodsに発表しました。支持脂質二重膜上に対象分子をとどめ、溶液中の分子との結合・解離を光散乱の変化から質量の時系列として読み取ります。分子を最長約1時間追跡し、ミリ秒単位の時間分解能を示しました。英国などの研究成果で、分析法の規格化や市販装置への搭載が発表されたものではありません。

光学測定装置と試料ステージのある実験室イメージ。ゴシック体で『単一分子の質量を追う』と表示

実証ではSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を固定し、抗体、抗体断片、ナノボディの段階的な結合を測定しました。さらにACE2との可逆的な結合・解離も捉えています。長時間観察には638 nmのレーザーを使う特製装置と、光リソグラフィーでパターン化した脂質二重膜が使われました。論文では、既存の短波長の装置条件では固定状態を長く維持できず、長波長化には光学コントラストとの兼ね合いがあると説明しています。

分子間相互作用を調べる研究室には、結合順序や滞在時間を質量情報とともに得る手法として参考になります。一方、著者が現段階で安定して追跡できる目安とするのは、初期質量が200 kDaを超え、質量変化が20 kDaを超え、滞在時間が数秒から数十分の系です。個別実験では約16.5 kDaのナノボディの結合も識別しましたが、一般的な適用範囲を示すものではありません。試料固定法、光学系、解析条件の検証が必要で、日常検査に直ちに使える完成済みの試験法ではありません。